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Q:アメリカ獣医放射線学会認定専門医とは?  

 アメリカにおいて、小動物臨床の発展は大学病院の充実とともに始まりました。1950年代に、開業医の先生方が自分達では診断がつけにくい、治療法が困難であるといった症例を依頼(上診)という形で、大学病院に送ることが始まりました。その際、受け入れ側の大学において、専門知識をもった獣医師が依頼症例の診療に当たる考えが生まれたわけです。私の所属していますアメリカ獣医放射線学会も同様に始まりました。はじめは、一般開業医の先生方の中で、画像診断に興味のある先生方が、アメリカ獣医放射線研究会という形で、勉強会を発足しました。しかし、一般開業を行いながら、研究や最新の画像診断技術を身に付けるのは困難であると判断され、その将来を大学教員に預けたわけです。1960年代に正式にレジデント制度(専門医養成過程)が出来上がり、一定の研修期間を指導者の下に修了し、また、認定試験に合格して認定専門医となる制度が出来上がったわけです。  

 専門医の資格を得るには、学会が認定した大学やそれに準ずる診療施設において、専門医の指導の下に最低3年間の臨床研修を積まなければなりません。レジデントの応募は多く、各大学に一人か二人の枠に、10人以上の応募者が集まることは日常茶飯事となりました。大学における成績と、インターン時代の経験、また、雇用者の推薦状を下に、レジデントが選ばれます。  

 レジデントの研修は、臨床研修、そのものだけでなく、学会における研究発表、専門誌への論文投稿等、学術面にも力を入れています。臨床研修では、犬や猫のレントゲン写真だけでなく、大動物(馬や牛)の画像診断技術も修得します。各種の造影検査法も実地で修得します。さらに、腹部超音波検査技術の習得も義務づけられるようになりました。最近では、CT検査やMRI検査の結果の読影にも参加します。毎日、10例から多い大学では30例くらいのレントゲン検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、シンチグラフィ検査の画像診断を行います。読影を書いたレポートは翌日、専門医(教員)のレビューを受け、最終的な診断書が作成されます。つまり、3年間、専門医から一対一の指導を直接受けることになるわけです。この研修期間が終わると、専門医認定試験を受験できます。6項目の出題で、解剖学から始まり、病態生理学、画像診断に関する内容の試験です。この一次試験に合格すると、今度は読影の口頭試験があります。これも胸部、腹部、骨格系、超音波など、6項目に別れており、それぞれの項目で合格点をとらないと、パスしません。受験者の約半数しかパスしないというこの難関を突破すると、専門医の認定が受けられます。ほとんどの専門医はさらに数年間、大学において教鞭を執り、さらに、診断技術を磨きます。現在では、多くの都市で専門医が必要とされているため、数年後に、専門開業されることが多くなっています。それにより、地域の獣医師の診断補助として、活躍されます。

 私の場合も、ウィスコンシン大学獣医教育病院で研修を受けた後、オハイオ州立大学、イリノイ大学、フロリダ大学で教鞭を執り、平成15年(2003年7月)に、大阪に戻り、専門開業をし、現在はこの福岡で開業しています。残念ながら、日本人では私以外の方で認定を受けておられる方はまだおられません。

Q:アメリカにおける依頼診療とは?  

 アメリカでは、一般診療をされる獣医師のことをプライマリケア獣医師(つまり、飼い主の方がはじめに(=プライマリ)診察を受ける先生方)と呼びます。プライマリケアの一番の重点は生まれてから息を引き取るまで、その動物の面倒を見るということです。つまり、予防医学を徹底させ、病気にかからないように動物たちを見守ることが要求されます。ワクチン接種、歯の掃除、定期検診等がこれに含まれます。さらに、病気にかかった際に、飼い主の方が一番頼りになる先生でもあるわけです。大切な動物たちの病歴を熟知されていますから、現在の病気が以前の病気と関連しているかどうか等もすぐに判断できます。しかし、病気が治りにくかったり、特別な検査を必要とする際に、専門医やその分野のことを良く経験している獣医師に紹介されます。その依頼診療を行う先生方が専門医であり、セカンダリケア獣医師となるわけです。はじめから、専門病院に行くことは無く、はじめはホームドクターのプライマリケア獣医師に相談し、その獣医師の判断のもと、依頼診療を紹介するというパターンです。

Q:VSPにおける検査内容は?  

 VSP内では、全国の獣医師からのレントゲン写真読影サービスを行っています。獣医師がさらに確認のために、飼い主に費用を出していただき、読影依頼をされています。読影診断書を依頼獣医師に送り返しています。インターネットを用いた場合には、即座に答えが帰るという利点もあります。  

 さらに、VSPには人医学で用いられているのと同様の超音波機器を設置しています。さらに、CT装置を用いた依頼診断も行っています。このCT装置はヒトの市民病院クラスの装置で、腫瘍の範囲を見たり、脊髄の異常を見つけたりと活躍してくれています。また、最新の硬性鏡機器もあります。これらを用いて、検査を行っています。検査終了後、診断書を依頼獣医師に送ります。  

 VSPでは、大型犬の股関節形成不全症、肘関節形成不全症のスクリーニング検査と証明書の発行を行います。また、ペルシャ猫とヒマラヤ猫における多のう胞腎のスクリーニング検査と証明書の発行も行っています。この場合も、依頼書が必要ですので、かかりつけの獣医師にご相談してください。  

 現在は総合診断サービスの充実に力を入れています。主治医のところで治療されているのに、状態が改善しなかったり、診断がはっきりしないような患者さんを受け入れ、血液検査、尿検査、その他の画像検査を組み合わせ、最も有効で、費用のかからない方法で確定診断を出すことが目的です。主治医からの依頼があれば、診療日時の予約を行っていただき、診療させていただきます。

Q:VSPでは、動物を研究に使うのですか?  

 VSPで行う検査は、患者の病気を治していくのに必要な診断名の確立を主目的にしています。つまり、人医学における大学病院や地域のセンター病院の診断補助と同じ意味合いです。VSP内で行った検査結果をまとめて、開業者に内容を伝えたり、珍しい症例の紹介をしたりという風に、継続教育を目的として、検査結果を使うことはありますが、研究目的で、患者を実験材料として使うことはしておりません。研究所と名前がついているので、このような誤解が生じますが、総合診断センターは日本には一人しか居ないアメリカ獣医放射線学会認定専門医による二次診療施設です。

 その他のご質問があれば、以下のアドレスにお送り下さい。

 fvsp@iveat.jp